第263話:恵み

私は部屋からほとんど出ていなかった。「部屋」といっても、それは幅二メートル、奥行き一・八メートルほどの極小のクローゼットのことだ。シングルベッドが一つ入るだけで、文字通り他には何も置けない。そこは、私が人生の最初の十四年間を過ごした場所であり、かつて私に与えられた唯一の空間でもあった。

何年も前にここを去った時と、ほとんど何も変わっていない。当時は、それでも幸運だと思っていた。十歳の誕生日に、ルナ・エイヴァがシーツを選ばせてくれたからだ。そして、物心ついた時からずっと持っている一匹のクマのぬいぐるみ。母からの贈り物だと聞かされていたが、本当はルナ・エイヴァがくれたものではないかと、私は密かに...

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