第11章 明日の夜7時、帝国ホテルに来て

外に出てから随分経つのに、藤原南はすでに苛立ちを隠せなくなっていた。

それに、葉田長明の話すことなど、もう一度思い出したくもなかった。

「用件があるなら早く言え!」彼は葉田長明に低い声で怒鳴った。

水原寧々には藤原南の表情は見えなかったが、その一言だけで、眉をひそめて苛立っている様子が想像できた。

葉田長明は周りを見回してから、藤原南に近寄って言った。「南さん、あの夜、水原寧々との間に何もなかったって姉さんに誓ったけど、結局姉さんの心にはまだ棘が残ってるんですよ。それに、南さん、あの夜本当に何もなかったのか、あなた自身にも確信がないでしょう?」

心の内を言い当てられ、藤原南の瞳の色...

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