第35章 折り紙

正直に言えば、桜は怖くなった。藤原南がもっと記憶を取り戻すことが恐ろしかった。手に入れた幸せをまた失うことなど、想像したくもなかった。たとえ自分が今、幸せを盗む泥棒のような存在だとしても、この幸福を永遠に自分のものにしたかった。

桜はベッドの縁に座り、長い間黙っていた。藤原南は不思議に思った。彼は桜の優しい言葉遣いに慣れていたので、顔を上げて見ると、案の定、桜の目には涙がたまっていた。

「南兄さん、実は最近すごく辛くて...人生って無常だと思うの。私たち、いつも将来のことを長い目で見て、いろんな計画を立てるけど、時間は人にそんなに多くの選択肢をくれないの。寧々姉の安田おばさんみたいに、こ...

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