第39章 逃げ場なし

葉田長明は黒いトレンチコートに黒いキャップ、そしてマスクを着用し、顔を完全に隠していた。別荘から急ぎ足で出ると、一台の車に乗り込み、風のように海市を後にした。

「姉さん、僕、やばいことになっちゃったみたい。最初は遊びのつもりだったのに、今じゃ大事になって、みんなが僕を探してる」

桜は真夜中に撮影現場を訪ねてきた弟の葉田長明を見つめ、彼がなぜこんなに慌てているのか理解できなかった。

「今度は何をやらかしたの?」桜は顔のファンデーションを軽く拭いながら尋ねた。

「ただ、ちょっと動画を撮っただけだよ」

「ただの動画なら、なぜそんなに慌てて怯えているの?正直に話して」

「動画に写ってる女...

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