第47章 人魚姫

水原寧々の実家は海市から離れた漁村にあり、そこには広大な干潟が広がっていた。水原寧々の母親は林田グループの会長・林田国志の一人娘である林田樺だった。林田国志は若い頃、大学教授として半導体製造の研究に取り組んでいた。

大学を離れた後に林田家を創業し、晩年になってようやく授かった一人娘の林田樺を心から溺愛していた。林田樺は海市のお姫様と呼ばれるほど、何不自由ない環境で育った。彼女は天真爛漫で率直、そして優しく、人を簡単に信じてしまう性格だった。そんな彼女だからこそ、貧しさを装い同情を買った水原に騙され、水原家へ連れ去られ、水原寧々を産むことになったのだ。

水原寧々の幼少期は非常に悲惨なものだ...

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