第48章 フランクの特産

「停電みたいだね」林田祐一は廊下のスイッチをいじってみたが、ビル全体が停電していることに気づいた。こういう停電は大抵三十分か一時間ほどで復旧するものだから、彼はそれほど心配していなかった。緊張のあまり突然自分の腕をつかんだ少女の体温を感じ、林田祐一はどこか密かな喜びさえ覚えていた。

「フランクの街は停電が多いって聞いてたけど。まさか本当に来るとは思わなかった。玄関に告知の一つも貼っておいてくれればいいのに。知ってたら、もう少し街を歩いてから戻ってきたのに」水原寧々は辺りを見回した。開けたドアの向こうの廊下は暗かったが、目の前の部屋の中はさらに暗かった。

「暗いの、怖い?」林田祐一の心の中...

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