第6章 君を海外に送る

水原寧々と藤原南は救急室に入り、それぞれの個室で傷を処置していた。

藤原南の傷は深刻ではなく、清潔に消毒して包帯を巻くだけで済む。彼は個室を出て、医療用の仕切り越しに隣の部屋にいる林田祐一の背中を見つめ、何とも言えない恐怖を感じた。

林田祐一が水原寧々に対する態度を考えると、そしてさっき車に乗せる際の冷たい視線を思い出すと、外に立つ藤原南は思わず寒気を感じた。

藤原南は思う。「今日は、どうしても林田祐一に説明しなければならない」

現在の林田祐一はs市の林田家の表向きの当主であり、藤原家の将来の事業は林田家に頼る必要がある。藤原家の多くの年月の努力が自分の一時の衝動で台無しになることは...

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