第29章

他人はこのことについて暗黙の了解をしており、口を閉ざしていた。

木村陽が永野豪の隣に座った時、永野豪は最小限の声で木村陽に話しかけたが、それでも私の耳に入ってきた。

「次はこんなに遅く帰ってくるな。危ないし、事前に俺に一言言っておけ。みんなが心配するだろ」

「豪さん、わかってるさ」

心の中で思った。わかっているなら、夜の闇の中を踏みしめて帰ってきたりしないだろう。

出かけた時はまだ太陽がまぶしく、五時頃だったはずだ。帰ってきた時には太陽はすでに水平線に完全に沈み、七時くらいだっただろう。

水汲み場は私たちの地下要塞からそう遠くない。せいぜい十分ほどの道のりなのに、この二人はほぼ二...

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