第9章

 龍崎圭にプロポーズされたけれど、まだ頷いてはいない。

 だって儀式は大事だし、ダイヤは巨大じゃなきゃ嫌だし、演出だって派手じゃなきゃ困るもの。

 けれど、明日という幸せが訪れるより先に、予期せぬ事態が向こうからやってきた。

 龍崎の母君は、やはり諦めていなかったのだ。

 会社の視察に向かう途中、ナンバープレートのないミニバンが強引に私の車の前を塞いだ。

 飛び出してきた黒服の大男たちに、問答無用で麻袋を被せられる。

 馴染みの手口、馴染みの展開。

 誘拐劇は、忘れた頃にやってくるものだ。

 再び光を目にした時、私は港の廃倉庫の中にいた。潮の匂いがする。

 目の前には龍崎夫...

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