第55章 自ら抱きつく? なかなかやるな

電話の向こうで、ヴィンセントは数秒間沈黙した。

突然かかってきた電話、しかも自分の名を正確に言い当てた見知らぬフォトグラファーに対し、彼が警戒心と不快感を抱いているのは明らかだった。

「興味はないな」ヴィンセントの声は冷淡だ。「取引先はもう決まっている」

「存じております」天宮星羅の声色には、さざ波ひとつ立たない。「グランド・ビジョン・グループを選ばれましたね」

「ですが、ご満足はされていない。そうでしょう?」

電話の向こうで、ヴィンセントの呼吸が一瞬止まった。

天宮星羅は彼に反論の隙を与えず、言葉を続けた。

「グランド・ビジョンが提示したポートフォリオの少なくとも半分は、低レ...

ログインして続きを読む