第7章 親子の対面現場
黒いロールス・ロイス・ファントムが公道を疾走しているが、車内の空気は氷点下よりも冷たかった。
リクとノアは後部座席でそれぞれボディガードに抱かれていたが、二人とも泣き叫ぶことはなく、驚くほど一致した沈黙で対抗していた。
「何が食べたい? どこへ遊びに行きたい? 俺は……」
黒崎蓮の言葉が終わらないうちに、遮られた。
「何も食べたくないし、遊びたくもない」
リクは小さな顔を強張らせ、一語一語はっきりと言った。
「この悪い人、早く僕と兄ちゃんを放してよ。じゃないとママが許さないぞ!」
黒崎蓮の胸が何かで激しく刺されたように痛んだ。
彼は深呼吸をし、声をできるだけ穏やかにしようと努めた。
「俺は悪い人じゃない。俺はお前たちの……」
「僕たちのパパじゃない!」
ノアの声は大きくはないが、異常なほど断固としており、彼の言葉を直接断ち切った。
「僕たちのパパはずっと前に死んだんだ」
黒崎蓮の顔色が瞬時に蒼白になった。
死んだ?
これが天宮星羅の教育か? あえて子供たちに父親を認めさせないつもりか!
名状しがたい怒りと鋭い痛みが胸の中で渦巻き、理性を焼き尽くしそうになった。
彼は猛然とアクセルを踏み込み、速度をさらに上げた。
彼は自分の別荘にも会社にも戻らず、そのまま黒崎家の本宅へと向かった。
黒崎家本宅はA市で最も地価の高い山の中腹に位置し、古風で威厳に満ちている。
ロールス・ロイスが門前に停まると、家政婦長の服部さんが慌ただしく出迎えた。
「若旦那様、どうして急にお戻りに? 大旦那様は裏庭で書道の練習をしておられますが」
黒崎蓮は何も言わず、ただボディガードに目配せした。
ボディガードはすぐに意図を汲み、後部座席のドアを開けた。
服部さんが二人の子供の顔をはっきりと見た時、彼女は呆然とし、手に持っていたハンカチを地面に落としてしまった。
この二人の子供、黒崎蓮の幼少期と瓜二つではないか!
「これは……」
服部さんの声が震えている。
「俺の息子だ」
黒崎蓮はその言葉を残し、まっすぐ裏庭へと向かった。
裏庭の梨の木の下で、矍鑠とした老人が絵を描いていた。彼こそが黒崎ホールディングスの重鎮であり、とっくに第一線を退き隠居している黒崎大旦那様だ。
「誰だ? 私が絵を描いている時は邪魔をするなと言ってあるだろう」
老人は顔も上げず、不機嫌そうに言った。
「おじい様、俺です」
黒崎蓮の声を聞き、老人はゆっくりと顔を上げた。何か小言を言おうとしたが、その視線は瞬時にボディガードに連れられた二人の子供に釘付けになった。
老人の手から筆が「パタリ」と落ちた。
彼は信じられない様子で立ち上がり、早足で近づいた。あまりの興奮に体さえよろめいている。
「蓮……この子たちは……」
「あなたの曾孫です」
黒崎蓮の声には、自分でも気づかない複雑な感情が混じっていた。
「わしの曾孫?」
黒崎大旦那様はよろよろと近づき、まじまじと見つめた。
「似とる! そっくりじゃ!」
すぐに、その風雪を経た顔に狂喜と感動が湧き上がった。
「お前の小さい頃と瓜二つじゃ!」
彼はわずかに震える手を伸ばし、子供たちの顔に触れようとした。
「さあ、抱っこさせておくれ! わしの可愛い曾孫よ!」
しかしリクは容赦なく顔を背け、その手を避けた。
「誰だよおじいさん! 抱っこなんか嫌だ!」
ノアはさらに一歩下がり、行動で拒絶を示した。
場が凍りついた。
黒崎蓮は眉をひそめ、しゃがみ込んで彼らを見た。
「曾おじい様だぞ。挨拶しなさい」
「嫌だ!」
リクは首をすくめ、大声で叫んだ。
「ママに会いたい! 早くママのところに帰してよ!」
黒崎蓮の忍耐は少しずつ削がれていった。
「彼女がお前たちに与えられるものの倍を、俺なら与えられる」
「今日からここがお前たちの家だ」
彼は物質的なもので子供たちを懐柔しようとした。子供なら誰でも喜ぶと思ったのだ。
「そんなのいらない!」
リクの目が赤くなった。
「この大悪党! ママを泣かせたくせに! 大っ嫌いだ!」
ノアは顔を上げ、黒崎蓮を見つめた。彼に酷似したその瞳には、子供らしい無邪気さはなく、冷徹な審美眼があった。
「お金があれば偉いと思ってるの? ママは言ってたよ。人として一番大切なのは良心だって。勝手に人の子供を奪うような人は、良心のない大悪党だ」
「何だと?」
黒崎蓮の怒りが一気に沸点に達した。
三十数年生きてきて、ビジネスの世界では殺伐とした決断を下し、負け知らずだった。
それが今、四歳そこそこの自分の息子に指をさされて罵倒されている!
「悪党だって言ったんだ!」
リクは恐れることなく言い返した。
「早く帰してよ! じゃないと本当に警察を呼ぶからな!」
傍らで見ていた黒崎大旦那様は、この混乱した状況からようやく異常を察知した。
彼は黒崎蓮を脇へ引っ張り、声を潜めて厳粛な顔で尋ねた。
「一体どういうことだ? この子たちの母親は誰だ? わしは一度も聞いたことがないぞ」
黒崎大旦那様は長年引退しており、花鳥風月を愛でる隠居生活を送っていた。孫のことは孫自身がうまく処理していると思い、過干渉はしなかったが、まさか今日こんな大騒動になるとは。
「子供たちの母親は、天宮星羅です」
黒崎蓮は苦渋に満ちた声でその名を吐き出した。
「天宮家のあの娘か?」黒崎大旦那様は驚愕した。「彼女は五年前に……」
「死んでいません」黒崎蓮の声には疲労が滲んでいた。「彼女は全員を騙したんです」
黒崎大旦那様は、遠くで「簡単には屈しないぞ」という顔をして立っている二人の小さな曾孫を見やり、それから怒りと混乱に満ちた孫の様子を見て、深くため息をついた。
どうやらこの数年、わしの知らないことがたくさん起きていたようじゃな!
黒崎大旦那様は子供たちの前に歩み寄り、できるだけ表情を和らげようと努めた。
「子供たちよ、怖がらなくていい。わしは曾おじいちゃんだよ。教えておくれ、お前たちのママは今どうしているんだい? この数年、元気にしていたかい?」
ママのことになると、リクはすぐに口を開いた。その口調は誇らしさと心痛に満ちていた。
「ママは世界で一番いいママだよ! 写真も撮れるし、ご飯も作れるし、遊園地にも連れて行ってくれる! 一人で僕たちを育ててくれて、すごく大変なんだ!」
「ママは夜、よく眠れないんだ。白い薬を飲まないと眠れないの。あれはラムネだって言うけど、僕知ってるよ、あれは薬だ」
「ママは言ったよ。僕たちがいるから何も怖くないって。だから僕は早く大きくなって、ママを守るんだ!」
ノアは顔を上げ、冷静に黒崎大旦那様を見つめた。
そして黒崎蓮に向き直り、大人たちを震え上がらせる言葉を放った。
「あなたたちがすごくお金持ちで偉い人なのは分かった。でも、僕たちはここにはいられない」
彼は一呼吸置き、小さな顔に年齢にそぐわない嘲笑と悲哀を浮かべた。
「だって、ママが刑務所に入った罪名は傷害罪で、あなたたちはみんなママを殺人犯だと言ったんでしょ。言い換えれば、僕たちは殺人犯の子供だ」
「僕たちみたいな人間が黒崎家に相応しくないと思うなら」
「ママのところに帰してくれませんか?」
