第5章 雪花の身元

瀬戸遼太郎が東京のアパートに足を踏み入れた途端、ジャケットの内ポケットでスマートフォンが短く震えた。

画面には、雪花からのメッセージがポップアップ表示されている。

『今夜八時、いつもの場所で会いましょ♡』

いつもの場所? 瀬戸の心臓が、瞬間的に激しく跳ね上がった。彼女が言っているのは、間違いなくあのホテルの八〇八号室だ。

「会いたいだと? ……ちょうどいい」

瀬戸は冷笑を浮かべ、親指で素早く返信する。『すぐにそっちへ向かう』

椎名先生は、もうこの世にいない。ならば、あの女は一体何者なんだ? 今夜こそ、白黒はっきりつけてやる。

『じゃあ、先に準備してるね~♡』

雪花...

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