第4章

「自衛隊家族感謝の日」の成功以来、私たちの生活は少しずつ平穏な日常へと落ち着いていった。

いじめ事件は適切に処理された。悪質な動画を作成した生徒たちは然るべき懲戒処分を受け、学校側もいじめ対策の教育を強化した。拓海の学校での状況は大幅に改善し――新しい友達も何人かできた。そして何より、あの深夜の父と子の会話を経て、丈史と拓海の親子関係は少しずつ修復に向かっていた。

すべてが好転していた。私が体調を崩した、十一月の第二週までは。

その朝、私は頭がふらつき、喉の渇きと痛みで目が覚めた。

インフルエンザめ……。

無理やり体を起こしたが、洗面所のドアにたどり着いた途端、激しいめまいに襲われ、壁にもたれかからずにはいられなかった。

階下から声がする――丈史さんと拓海が話している。私は弱っているように見られないよう努めながら、階段を下りた。

「おはよう」掠れた声が出た。

丈史さんはコーヒーマグに牛乳を注いでいた。私の声に気づくと、彼はすぐに振り返った。「和美? 顔色が悪いぞ」

「ちょっと疲れてるだけ」私は軽く手を振り、キッチンアイランドに向かって歩きながら言った。「朝ごはん、作るから――」

言い終わる前に、脚から力が抜け、体が不意に前のめりになった。

丈史さんがさっと駆け寄って私を抱きとめる。その温かく力強い手が私を支え、彼の手のひらが私の額に押し当てられた。

「熱がある。高いぞ。布団に戻って休め」

「大丈夫よ、ただ――」

「和美さん、顔、真っ白だよ」拓海がリュックを床に落とし、心配そうにこちらへ歩み寄ってきた。「寝たほうがいいって」

「でも、朝ごはんが――」

「私がやる」丈史はきっぱりと言った。「拓海、部屋まで運ぶの手伝え」

父と息子は私の両脇を支え、主寝室まで運んでくれた。丈史さんが私を布団に寝かせ、拓海はナイトスタンドに水の入ったグラスを置いた。

「解熱剤を持ってくる」丈史さんは言った。「会社には電話して、今日は休む」

「いいわ、仕事に行って」私はか細い声で言った。「一人で大丈夫だから」

「母さんが病気の時、何を飲んでたか知ってる」拓海が不意に口を開いた。「塩と生姜を少し入れたお粥を作ってた。胃に負担をかけずに元気が出るって言ってた」

彼が自ら亡くなった母親の話をしたのは、これが初めてだった。それも、私を助けるために。

「すごくいいね」私は優しく言った。「もし、面倒じゃなければ」

「面倒じゃない」拓海は首を振った。「作り方、覚えてるから。父さん、仕事行っていいよ。僕が和美さんの看病する」

丈史さんはためらった。「拓海、本当に大丈夫か?」

「大丈夫」拓海は頷いた。「今日は土曜日で学校もないし。それに……」彼は一度言葉を切り、「僕が、看病したいんだ」

一時間後、拓海が湯気の立つお粥の入ったお椀を手に、部屋に入ってきた。

お粥は完璧な出来栄えだった。米粒は柔らかいのにべちゃっとしておらず、生姜の優しい風味がきつすぎることなく喉に心地よい。そして何より、作ってくれた人の心遣いが感じられた。

「味、どう?」拓海は布団の横の椅子に座り、緊張した面持ちで尋ねた。

「おいしい」私は心から言った。「お母さんのと同じくらい?」

彼は頷き、その瞳に懐かしむような色がよぎった。「母さん、いつも言ってたんだ。病気の人の世話をするのは、一番基本的な愛情表現だって。家族でも、友達でも、知らない人でも――相手が弱っている時は、手を差し伸べるべきなんだって」

この十四歳の少年を見ていると、胸の奥がじんわりと熱くなった。彼は、母親に教わったやり方で、私を看病してくれているのだ。

「拓海くん」私は優しく呼びかけた。「お母さん、素敵な人だったのね」

「うん」彼の声が少し詰まった。「母さんは、いつも人を元気にする方法を知ってた。ちょうど……父さんにしてる、和美さんみたいに」

その言葉に、私の心臓がどきりと跳ねた。「私が、あなたのお父さんに何をしてるって?」

拓海は私を見て微笑んだ。「あの夜、父さんが発作を起こした時、和美さんは怖がってなかった。どうすれば助けられるか知ってた。母さんも、昔はそうだったんだ」

彼は一瞬、言葉を止めた。「僕、何度も試したんだ。でも、ただの子供だし。大人が悪夢から抜け出すのをどう助ければいいのか、わからなくて」

「拓海くんはもう十分すぎるくらい頑張ってるわ」私は手を伸ばし、彼の髪を優しく撫でた。「今は私がいる。一緒に彼を助けていきましょう」

拓海は頷き、その瞳に安堵の色が浮かんだ。「あのね。母さんが死んでから、うちではもう誰もこんなお粥を作れないんだって思ってた。でも今日……今日、なんだか母さんがまだここにいるみたいだ」

「いるわよ――あなたの中に。拓海が彼女から学んだ、あらゆる愛情の形の中にね」

「母さん、きっと和美さんのこと好きだったと思う」拓海が不意に言った。「一番困っている時に人を見捨てない人が、一番素晴らしい人だっていつも言ってたから」

私たちは微笑み合った。その瞬間、私は本物の親子のような繋がりを感じていた。

午後の三時。うとうとと微睡んでいた私は、玄関のドアを激しく叩く音で突然、意識を引き戻された。

「開けろ!和美!いるのはわかってるんだぞ!」

心臓がずしりと沈んだ。篠原隆の声だ。

「拓海くん?」私は弱々しく呼びかけた。

返事はない。彼は薬を買いに店へ行ったに違いない――一時間ほどで戻ると言っていた。

ドアを叩く音はさらに激しくなり、篠原隆の狂乱した叫び声が伴った。「和美!隠れても無駄だ!話があるんだ!」

私は震える足で布団から出て、窓から外を覗き込んだ。篠原隆が肩で玄関ドアに体当たりしている。前回よりもさらにみすぼらしく、狂気に満ちた形相だ。

「バキッ――」

玄関ドアが破られた。

私は激しく鼓動する心臓を押さえながら、急いで寝室のドアに鍵をかけ、携帯電話を掴んで丈史さんに電話した。

「丈史さん、篠原隆が家に押し入ってきたの」私は囁いた。「寝室にいるけど、ドアは長く持たない――」

「今すぐ向かう」丈史さんの声は緊迫していた。「警察に電話して、どこかに隠れろ。十分で着く」

篠原隆が叫びながら寝室へ向かってくる足音が響いた。「和美!隠れるのはやめろ!じっくり話し合おうじゃないか!」

寝室のドアが、彼が叩きつけるたびに揺れた。「開けろ!聞こえてるんだろ!そこにいるのはわかってるんだ!」

私は布団の後ろに隠れ、全身を震わせた。熱で頭がぼうっとして、まともに考えられない。

「バンッ!」

篠原隆がドアを強く蹴り始め、ドア枠がガタガタと揺れた。

「借金取りに追われてるんだ、和美!」彼の声がドア越しに聞こえた。「殺される!助けてくれ!俺たちは夫婦だ――見捨てるなんてできないはずだ!」

「篠原隆、私たちは離婚したのよ!」私は叫び返した。「それに、あなたを助けるお金なんてないわ!」

「あるだろ!」篠原隆は怒鳴った。「こんな豪邸に住んでるんだ――新しい旦那は金持ちに決まってる!」

「バンッ!」

ドア枠に亀裂が入った。

私は一一〇番にダイヤルしたが、話し終える前に、ドアが蹴破られた。

篠原隆が戸口に現れた――髪は乱れ、目は血走り、右手にはナイフを握りしめている。

なんてこと、完全に正気を失っている?

「やっと見つけた」彼はそう言うと、ナイフを振りかざしながら私に向かって歩いてきた。「大人しく俺と来い。お前の旦那に金を出してもらいに行くぞ」

「あなたとはどこにも行かない」私は後ずさった。「あなたには助けが必要よ。でも、それは私が与えられる類のものじゃない」

「助けなきゃダメなんだ!」彼は突然、前に飛びかかり、私の腕を掴んだ。「今夜中に払わなければ、指を切り落とすって言われたんだ!」

私は振りほどこうともがいたが、熱のせいで力が入らない。「離して!」

「いやだ!」篠原隆の目には、絶望的な狂気が宿っていた。「お前が最後の希望なんだ!」

「私はもうあなたの希望じゃない」私は必死に言った。「私には新しい生活があるの。私のことを本当に大切に思ってくれる人たちとのね!」

その時、リビングから切羽詰まった足音が聞こえた。

「和美!」丈史さんの声が響いた。

篠原隆の顔色が変わった。彼は私の喉にナイフを押し付けた。「奴をここに呼べ!金を出させろ!」

「丈史さん!」私は叫んだ。「気をつけて、篠原隆が――」

篠原隆が私の口を塞いだ。「黙れ!」

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