第5章

藤本和美視点

ドアのところに丈史さんが現れた。目の前の光景を見て、彼の表情は一瞬で危険なものに変わった。

「彼女を放せ」丈史さんの声は静かだったが、凄みに満ちていた。

「千五百万円よこせ」篠原隆は私にナイフをさらにきつく押し当てた。「さもなくば、全員道連れだ!」

「お前はもう法を犯している」丈史さんはゆっくりと部屋に入ってきた。「今すぐ和美を放せば、まだチャンスはある」

「それ以上近づくな!」篠原隆は後ずさったが、運悪くカーペットに足を取られて転んでしまった。

その一瞬の隙に、丈史さんは稲妻のように動き、教科書通りの制圧術で篠原隆を地面に押さえつけた。

「終わりだ」丈史さ...

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