第6章

藤本和美視点

一週間後、私はすっかり回復した。私の誕生日祝いに、日本アルプスへハイキングに行こうと丈史さんが提案してくれた。

「誕生日に山登りなんて、本当にいいの?」と私は不思議に思って尋ねた。

「信じて」丈史さんはミステリアスに微笑んだ。「特別な一日にしてあげるから」

私たちは車で長野県の八ヶ岳へ向かった。十一月も下旬になり、山の空気は澄み切って冷たかったが、日差しはまだ少し暖かさを残していた。ほとんどの葉は落ちてしまい、枝には黄金色の葉が数枚、震えるように残っているだけだった。

「冬の山の景色も、独特の美しさがあるよね」と拓海くんが言った。「雪が降ったら、ここは真っ白なワ...

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