第107章

中村奈々は首を横に振った。

「いいえ。お気遣いありがとうございます」

 トイレから相次いで出てくる二人を目撃し、しかも中村奈々の頬が朱に染まっているのを見て、山下心の胸中でけたたましく警報が鳴り響いた。

 ――まさか。

 謙志兄さんは森田杏莉や森田美波だけじゃなく、あの中村奈々とも関係を持っているの?

 山下心は焦燥に駆られ、慌てて黒田謙志の袖を引いた。

「謙志兄さん……」

 黒田謙志が小首を傾げる。

「どうした?」

「私……」

 山下心は中村奈々を横目で見やり、言葉を濁してうつむいた。

「余計なことは考えるな。少し休め」

 黒田謙志はなだめるように、山下心の頭をぽん...

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