第109章

「中村さん」

 山下心の声だ。

 中村奈々はぴたりと動きを止め、顔色を青ざめさせた。

 黒田謙志は眉をひそめる。あの女、中村奈々に何用だってんだ。

 部屋の中からの反応がないことに、ドアの外にいる山下心は不審げに眉を寄せた。そして少し声を張り上げる。

「中村さん、いらっしゃる?」

 中村奈々は唇をきつく噛み締め、黒田謙志を一瞥してからドアに向かって叫んだ。

「います。何かご用ですか?」

 彼女は黒田謙志の不機嫌そうな顔を無視し、答えながら身を起こして服を着始めた。

「中村さん、ドアを開けてくださらない?」

 山下心は礼儀正しく尋ねてくる。

 中村奈々は少し躊躇したが、歩...

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