第122章

その建築設計院は、組織としての規模こそさほどではないが、敷地面積は広大だった。林立する高層ビル群。そこには名だたるデザイナーたちがひしめき合っている。

中村奈々はその入り口にあるバス停の陰に身を潜め、長谷部誠の姿を探していた。

不意に、足音がすぐ側を通り過ぎていく。

ふと顔を上げ、その人物を見た瞬間――彼女は驚愕に目を見開いた。黒田祐太郎?

黒田謙志の叔父が、なぜここに?

単なる偶然だろうか……。

見間違いかと思い、強く瞬きをして凝視する。間違いない、黒田祐太郎だ。

彼女は咄嗟に身を屈め、靴紐を結ぶふりをして様子を窺った。

幸い、黒田祐太郎は彼女に気づく様子もなく、秘書を連れ...

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