第124章

悪臭など気にも留めず、黒田謙志は急いで立ち上がり、中村奈々を抱き起こして地面に横たえると、すぐに人工呼吸を施した。

中村奈々はうっすらと目を開けた。視界はまだ霞んでおり、焦点が定まらない。彼女は苦しげに口を開き、力を振り絞って呼んだ。

「謙……志……」

その声はあまりにも小さく、不明瞭だった。黒田謙志は中村奈々の顔に耳を寄せ、優しく囁いた。

「怖がるな。もう大丈夫だ、俺はここにいるぞ。奈々……」

黒田謙志の端正な顔立ちを目にして、中村奈々の張り詰めていた心はようやく安堵に包まれた。だが、堰を切ったように涙が溢れ出す。

「謙志さん、もう二度と会えないかと……」

黒田謙志は指先で彼...

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