第127章

それからの数日間、中村奈々は病院に詰めきりで高橋文也の世話を焼いていた。お茶を淹れ、薬の管理をし、その姿はさながら献身的な介護士のようだ。

ただ、トイレの介助だけはさすがに恥じらいが勝り、病院の看護師に任せるしかなかった。

手が空いた時は、二人でスケッチブックを広げ、鉛筆を走らせる。

高橋文也が技法を指南し、中村奈々はそれを貪欲に吸収していく。その横顔は毎日、生き生きと輝いていた。

平穏だが、これ以上ないほど満ち足りた日々。

生活とは本来、こうもシンプルで純粋なものであるべきだと、中村奈々はしみじみと感じていた。

だが、そんな休暇も終わりを告げる。仕事に戻らなくてはならない。

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