第145章

「ごほっ、ごほっ――」

中村美知子は中村良太郎の太い腕を両手で必死に引き剥がそうとし、胸板を叩いた。鬱血した顔は紫色に変わっていく。

「離して……ごほっ……離してよ……」

その凄まじい形相に恐怖した中村奈々は、父の腰にしがみつき、悲鳴を上げた。

「お父さん! 離して! お願いだから!」

黒田美紀子も横から必死に諌める。

「良太郎、落ち着きなさい! やっとの思いで外に出したのよ。また捕まって、奈々ちゃんから父親の庇護を奪うつもり?」

娘が父親を失う、という言葉に、中村良太郎の腕が強張った。

彼はゆっくりと、その拘束を解く。

中村美知子はその場に崩れ落ち、喉を押さえて激しく咳き...

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