第150章

「グサッ——」

鋭利な刃先が肉を裂く、生々しい音が響いた。

黒田謙志はくぐもった呻き声を漏らす。鮮血がナイフの柄を伝い、純白のタイル床へと滴り落ちていく。

「謙志!」

森田美波は魂が抜けたような顔で、悲鳴に近い声を上げた。

黒田謙志は腹部を押さえながら激しく咳き込み、額には脂汗がびっしりと滲んでいる。

その苦悶の表情を見た森田美波は、慌てて彼を支え、その場に座らせた。

「早く救急車を!」

彼女は錯乱気味に、ドアの外に控えていたボディーガードへ怒鳴った。

中村良太郎は、まさか中村奈々がこれほどまでに苦しむとは思わず、胸の内で後悔の念に駆られていた。

こうなると分かってい...

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