第169章

そう言い捨てると、彼女はドアを開けて出て行こうとした。

黒田謙志がガシッとその腕を掴み、引き止める。

彼の胸は激しく上下し、拳はミシミシと音を立てて握りしめられていた。

「中村奈々……ッ」

彼は怒りを込めてその名を叫んだ。

中村奈々は彼の瞳に宿る凶暴さを微塵も恐れず、強気に顎を上げ、真っ向からその視線を受け止める。

あたりには一触即発の空気が漂っていた。

その様子を見た黒田美紀子は、慌てて彼の腕を引いてなだめた。

「謙志、奈々と張り合わないで。あの子は気が動転しているだけなのよ……」

続いて黒田美紀子は中村奈々に向き直り、諭すように言った。

「奈々、謙志を誤解しないで。彼...

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