第177章

中村奈々はその言葉に呆然とし、瞳には驚きと感動が入り混じっていた。

「私には、あんたたち若者みたいに『愛してるの、愛してないの』なんて恋愛ごっこに興じる気力はないわ。あいつだって決めてるのに、あいつときたら、いつものらりくらりと逃げ回ってばかり」黒田美紀子はまた紫煙をくゆらせ、煙が彼女の顔を覆う。「もしあいつがこのまま逝っちまったとしても、それもまた本望よ。その時は、私があいつの代わりにあんたを見守ってやる。結婚式も見届けて、孫の世話だってしてやるわ……」

そう言うと、黒田美紀子はプッと吹き出した。「考えてみたら、それも悪くないわね」

中村奈々の胸が締め付けられるような痛みを覚えた。黒...

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