第182章

中村良太郎は奥歯を噛み締め、最後に憎々しげに黒田謙志を睨みつけると、踵を返して立ち去った。

黒田謙志は鼻を鳴らし、侮蔑の色を浮かべる。彼は昔から、強硬な態度に出られると徹底して反発する質だ。

だが、中村奈々へ向き直った瞬間、その瞳は打って変わって水のように優しくなる。

中村奈々は、怒り心頭で去っていく中村良太郎の背中を呆然と見送り、途方に暮れていた。

彼女は立ち尽くしたまま、独り言のように呟く。

「どうしよう……これじゃ、お父さんを本気で怒らせちゃったわ」

黒田謙志は心の中で冷ややかに思う。怒ったところで何だというのだ。あの家に戻れないなら、俺が今後ずっと面倒を見てやればいいだけ...

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