第19章 その男は誰

「こんにちは、中村奈々と申します」中村奈々は礼儀正しく彼の手を握り、すぐに離した。

「お歳からすると、どこかの美術大学の学生さんですか」と高橋文也は尋ねた。

中村奈々の顔から笑みが凍りつき、気まずそうに首を横に振った。「大学には行っていません。もう働いていて、画廊でインターンをしています」

高橋文也は思案深げに彼女を一瞥した後、笑って言った。「大学に行っていないからといって、大したことではありませんよ。英雄は出自を問わず、と言いますから。絵画にとても興味がおありのようですし、私たちの中央美術学院では毎週いくつか公開講座を開いています。聴きに行ってみると、何か啓発されることがあるかもしれ...

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