第190章

病院は、喧騒に包まれていた。

正面玄関は報道陣によって三重にも四重にも取り囲まれ、警察官たちが必死に交通整理を行っている。

高橋文也は中村奈々を庇うようにしっかりと抱き寄せ、彼女に帽子を目深に被らせた。人混みをどうにか押し分け、二人は逃げるようにエレベーターへと乗り込んだ。

中村美知子は一命を取り留め、すでに病室へと運ばれていた。しかし情緒は極めて不安定で、泣き叫ぶ声が廊下まで響いている。

中村良太郎は彼女の向かいに座り、ただ項垂れて一言も発しようとしない。

病室の前に辿り着いた中村奈々が目にしたのは、長椅子に一人腰掛ける黒田美紀子の姿だった。

「黒田さん?」

「……私が、彼女...

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