第54章 母親の無情を恨まないで

この件は彼女が深く隠していたことだった。中村良太郎に何かあったと知った時、彼女はこっそりと自分の宝飾品を売り払い、金の延べ棒に換えていたのだ。

騒ぎが収まった後、その金で都心部のマンションを一部屋買い、中村智が通学しやすいようにした。

自分のやったことは極秘だと思っていた。かつて自分が入院して金がなかった時でさえ、手をつけることはなかった。それなのに、まさか中村奈々が知っていたなんて!

中村美知子は罪悪感でいっぱいになった。

彼女はどもりながら反論した。「何を馬鹿なこと言ってるの? あたしにそんな甲斐性があるわけないでしょう!」

中村奈々は鼻で笑った。中村美知子が認めようとしないの...

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