第62章 やっと見つけた献身の機会

黒田謙志の突然の退場に、観客席は騒然となった。森田家の人々はなおさら狼狽し、気を失った森田杏莉の介抱に追われる傍ら、逃げ出した黒田謙志に電話をかけ、一刻も早く戻ってくるよう懇願していた。

その他の招待客はさらにざわめき、様々な憶測が飛び交う。

「どういうこと?」

「黒田さん、どうして急に帰っちゃったの? 何かあったのかしら?」

「さあね、駆け落ちでもしたんじゃない?」

……

黒田美紀子もこのような不測の事態は予想しておらず、めちゃくちゃになった結婚式場を苦々しい顔で見つめていた。

あの黒田謙志、相変わらずいい加減な男だ。まさか土壇場で結婚式から逃げ出すなんて!

黒...

ログインして続きを読む