第70章 「どうした?心が弱くなったのか?」

中村奈々は落ち着き払った様子でお茶を啜る。

「好きに値段をつけろ、と言ったのはあなたでしょう? 何です? もう怖気付いたのですか? それなら、私が無駄足を踏んだということにしましょう」

斉藤父が慌てて口を挟んだ。

「中村さん、真由美はまだ子供で、物事の分別がつかないのです。どうか、あの子のことは大目に見てやってください」

彼はしきりに斉藤真由美に目配せし、謝罪するよう促した。

しかし残念なことに、斉藤真由美は全くその気にならず、逆に矛先をすべて中村奈々に向けた。

「誰が怖気付いたって? あなたがめちゃくちゃな値段をふっかけたんじゃない!」

中村奈々は眉をぴくりと上げた。...

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