第76章 私はもうあなたの手の中の操り人形ではない

電話を切ると、中村奈々はすぐに荷物をまとめて家路についた。

ホームファッションビルはやや辺鄙な場所にあり、中村奈々が自宅に着いたのは一時間後のことだった。

集合住宅の棟の外で二宮梅子が待っており、中村奈々の姿を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。

「奈々、どうしてこんなに遅いの。弟さんはもう行っちゃったわ。どうしても引き止められなくて」二宮梅子は焦ったように言った。

中村奈々は眉をひそめる。「行った?何か持って行きましたか?」

「絵を何枚か持っていったみたい。止めようとしたんだけど、力が強いし、足も速くて……」二宮梅子は為す術もなかったと語った。

「絵?」中村奈々は内心ぎくりとし、二...

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