第78章 その暖かさを探す

「デッサンで?」中村奈々は彼の言葉を繰り返した。

デッサンは確かにそれほど手間はかからないが、アイデアや表現力に対する要求が極めて高い。そのため、中村奈々にはあまり自信がなかった。

中村奈々が躊躇しているのを見て、高橋文也は付け加えた。「賞が取れるかどうかは関係ない。君が全力を尽くせばそれでいい。ただ、君がデッサンで描けば、もしかしたら本当に新しい境地が開けるかもしれないと思ってね」

中村奈々は唇をきゅっと結んでしばらく考え込み、やがて頷いた。「はい、高橋先生。精一杯頑張ります!」

電話を切ると、中村奈々は立ち上がり、顔の涙を拭い、服についた土埃を払って家路を急いだ。

どんなに難し...

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