第80章 彼は自分が完全に狂っていると感じた

急カーブに差し掛かったところで、高橋文也は卓越したテクニックを見せつけた。

彼は体を内側に傾け、スキー板を正確に雪面に食い込ませ、猛スピードでターンを完了させた。

黒田謙志も引けを取らない。体のバランスを調整し、より安定したスタイルでそのカーブを通過した。

中村奈々は緊張して両手を握りしめる。高橋文也の見事な滑りに内心で喝采を送りつつ、同時に黒田謙志のこともハラハラしながら見守っていた。

黒田謙志と知り合って久しいが、彼がこれほどスキーが上手いとは今まで知らなかった。

森田美波は滑走する二人を眺め、それから緊張した面持ちの中村奈々を一瞥し、怨毒に満ちた笑みを浮かべた。

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