第96章

黒田謙志が、とっさに彼女の体を支えた。

「謙志さん、私は……」

 中村奈々の目元が赤く染まり、瞳の中で涙の粒がくるくると回った。

「君がそんなことをするはずがない。信じているよ」

 黒田謙志は低い声で、慰めるように言った。

 中村奈々は唇を噛みしめ、彼の漆黒の瞳を見つめた。鼻の奥がツンとして、危うく涙がこぼれ落ちそうになる。

 わけがわからなかった。どうして、こんなことになってしまったのか?

 突然、制作過程を記録していたブログのことを思い出した。あれさえあれば、これらが自分の作品だという証明になる。中村智こそが、憎むべき盗作者なのだと。

 彼女は震える手でマイクを握りしめ、...

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