第107章 民宿

佐藤茜は原田麻友を車に引き入れ、窓ガラスに身を乗り出すようにして、外で原田渉と原田日菜たちが話している様子を窺った。

耳を澄ませてみたが、何も聞こえない。

「ねえ、渉兄さん、原田日菜と何を話してるんだと思う?」佐藤茜はゴシップ好きらしく原田麻友に尋ねた。「泣いてる、原田日菜がまた泣いてる! 原田さんが渉兄さんを叱ってる。きっとまた原田日菜のことでしょ」

佐藤茜はチェッと舌打ちし、もう見たくないとばかりに顔をそむけた。

「原田麻友、あんたは少しも腹が立たないの?」彼女は、平然としている原田麻友に不思議そうに尋ねた。「原田さんがあんなにえこひいきして、あんたにあんな態度をとってるのに、腹...

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