第23章 全て偽物

医者が安全通路から去っていったのに、鈴木蛍はまだその場に立ったまま、軽くため息をついた。

「瑠璃、今回は本当にやり過ぎよ。私になりすまして、圭の幼なじみだと騙したことは許すわ。でも、妊娠なんてことで嘘をつくなんて」

鈴木蛍の声は、ちょうど良い大きさで藤原圭の耳に届いた。

嘘だった。すべてが嘘だったのだ!

妊娠も、瑠璃ちゃんも、圭お兄ちゃんも、全部嘘!

あの純真な思い出が、鈴木瑠璃に自分を操る道具に変えられていた!怒りが藤原圭の頭を支配した。もはや鈴木蛍に真相を聞く気も失せていた。なぜ鈴木蛍が鈴木瑠璃の嘘を隠していたのか、考えるまでもない。

鈴木蛍はあまりにも優しすぎる。妹の嘘が暴...

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