第25章 始まりの場所

鈴木瑠璃の体調は日に日に悪化していた。自分の命があとわずかだと悟った彼女は、時間を見つけては精神病院に入院している祖父の見舞いに行くようになった。この世で唯一の肉親である祖父のもとへ。

質素な昼食を前に、瑠璃は祖父の向かいに座っていた。祖父の顔色は相変わらず青白かったが、孫の姿を見つめる目には温かな光が宿っていた。

「瑠璃ちゃん」祖父は優しく微笑みかけた。

瑠璃は心配そうな眼差しで祖父の手を優しく握り締めた。「おじいちゃん、最近どう?」

「食べられるし、眠れるし」祖父は弱々しい声で答えたが、元気な様子を見せようと努めていた。「瑠璃は?仕事は順調かい?」

「まあまあよ。最近デザインの...

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