第26章 売りに出る

藤原圭は無駄話をせず、すぐに本題に入った。

「蛍のお腹がどんどん大きくなってきている。名分を与えるつもりだ」

鈴木瑠璃は黙ったまま、藤原圭をじっと見つめ、彼がこの先どんな厚かましい発言をするのか見守っていた。珍しく藤原圭は鈴木瑠璃の挑発的な視線に怒りを覚えることもなく、視線を彷徨わせながら彼女の体を舐めるように見つめた。その蛇のようにぬらぬらした眼差しに、鈴木瑠璃は不快感を覚えた。

「お前が大人しくしていれば、今までどおりでいられる」

一瞬の間の後、鈴木瑠璃は笑みを浮かべた。

「社長の仰る通り、正妻である私が愛人に降格され、あの破廉恥な不倫相手が私の座を奪うと?そういうことですか?...

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