第52章

鈴木瑠璃はゆっくりと目を開けた。目の前に広がる白い天井に一瞬戸惑いを覚える。体を起こそうとしたが、めまいを感じて再び横になった。耳元で小さな話し声が聞こえる。

「やっと目が覚めたのね!」田中久美子の声が春風のように優しく響き、瑠璃の意識を引き寄せた。

「久美子、ここはどこ?」鈴木瑠璃は必死に思い出そうとするが、道端で倒れた記憶しか浮かばない。

「病院よ。昨夜あなた倒れちゃったの」田中久美子は心配そうに彼女を見つめ、「幸い、声のすごく素敵な男性があなたを運んでくれたわ。あなたのスマホから私に電話してくれて、来てほしいって」

「男性?」鈴木瑠璃の心が震えた。頭に藤原圭の姿が浮かんだが、す...

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