第2章

ノラ視点

 二週間後、私はケイルの車に乗り、窓の外に流れていく街の景色を眺めていた。傷は癒えつつある。深く息を吸い込むとまだ痛むけれど、もう動ける。いざとなれば戦うことも可能だ。

 ケイルが寄越した医者は何も訊かなかった。それでいい。その方がいい。

「今夜、会合がある」と、ケイルが道路に視線を固定したまま言った。「相手はロシアの武器商人だ。デカい金が動く。君も来い。ただし、見てるだけだ。いいな?」

 私は頷く。

 ロシアの武器商人。今夜。

 その記憶が、不意に胸を突いた。この取引のことは知っている。前の人生で、ルシアンは何週間も前にロシア人たちを金で買収していた。罠を仕掛けるために。結末を見る前に私は死んだが、ルシアンのことだ、ケイルはおそらくここで部下を失ったのだろう。

 二度とそんなことはさせない。

 到着した造船所は暗く、錆と潮の匂いがした。ケイルの部下が六人、すでに周囲に配置されているが、闇に紛れてほとんど見えない。

 二十分が経過した。そのとき、ヘッドライトが暗闇を切り裂いた。

 最初に降りてきたのは、高価そうな灰色のスーツを着た禿げ頭の男で、その後ろに四人のボディガードが続く。スーツが体に合っていない。肩のあたりが窮屈そうだ。

「ヴォーンさん」重いロシア訛りの声。「ビジネスをしたいと伺っていますが」

「そっちが何を提示するかによるな」とケイルは言った。

 交渉が始まる。改造されたAK-47、五百丁、弾薬込み。ケイルは一丁あたり18万円を提示する。ロシア人は23万円を要求。

 私はケイルの後ろに立ち、興味などないという素振りを見せている。だが、すべてを追っていた。

 ロシア人の腕時計が、妙な具合に光を反射した。こんな仕事には派手すぎる。そのとき、悟った。あれはただの時計じゃない。

 録音装置だ。

 視線を上げると、頭上の足場にいるはずのない三つの人影があった。微動だにしない。完璧すぎる位置取りだ。

 私はケイルに歩み寄り、声を潜める。

「奴の時計に盗聴器が。屋上に狙撃手が三人。九時、十二時、三時の方向」

 ケイルの肩が一瞬、強張る。彼が視線を上に走らせ、位置を確認するのが見えた。

「確かなのか?」

「ええ」

 そこから先は、すべてが速かった。

 ケイルが銃を抜き、ロシア人の頭にまっすぐ狙いを定める。彼の部下たちも即座に反応し、武器を構えて彼らを取り囲んだ。

「ルシアンに伝えろ。お前の罠はだんだん見え見えになってきたってな」ケイルが言った。

 ロシア人は青ざめる。「何のことだか――」

 一発の銃声が空気を切り裂いた。ケイルからではない。頭上からだ。弾丸はロシア人の足元のコンクリートを撃ち、破片を飛び散らせた。

「動け!」ケイルが叫ぶ。

 私たちは遮蔽物を目指して走り、周囲の輸送コンテナに銃弾が叩きつけられる。ケイルの部下たちが応戦し、狙撃手の潜む場所を照らし出した。すべては、おそらく三分ほどの出来事だった。

 それが終わったとき、ロシア人たちの姿は消えていた。ケイルの部下の一人が肩に一発食らったが、まだ立っている。

 ケイルが私の方を向いた。その目には、先ほどまでとは違う何かが宿っている。

「どうやって気づいた?」

「昔、こういう仕事をしてたから」と私は答える。「物事に気づくようになるんです」

 彼は長い間、私をじっと見つめていた。

「君に命を救われたな」

 私は何も言わない。前の人生の記憶がなければ、何も見抜けなかったことなど説明できるはずもない。私は観察眼が鋭いわけじゃない。ただ、ずるをしているだけだ。

 その夜遅く、私は安全な場所を抜け出した。午前一時を過ぎている。ケイルの部下たちは侵入してくる脅威に備えて見張っているが、出ていく者には気づかない。彼らは私が出ていくのを見なかった。

 街の治安の悪い地区に、古いピアノバーがある。何年も前に廃墟となった場所だ。ルシアンはそこを会合場所として使い、地下室に記録を保管していた。その記録が必要なのだ。

 前の人生で、私はここに何十回と来たことがある。ルシアンが、まるで何か意味があるかのように革装丁の本をめくるのを、その前でただ立って見ていた。

 裏口のドアは錆びついている。鍵なんて冗談みたいなものだ。一分もかからずに中に侵入する。

 埃だらけだ。ステージの上のピアノは、積もった汚れの下で死んでいるように見える。場所全体が腐敗臭に満ちていた。

 地下室への入り口はバーカウンターの裏にある。床に隠されたパネルを開けると、下へと続く木製のはしごが現れた。

 私は暗闇の中へと降りていく。

 壁際には金属製の棚が並び、箱や台帳がぎっしりと詰め込まれている。どこを探せばいいかは正確にわかっていた。左から三番目の棚、奥から四番目の箱。黒い革装丁の本。

 それを引き出し、開く。

 ルシアンの筆跡。冷たく、正確無比な文字だ。

「二〇一九年三月十五日、標的――マイケル・ロバーツ上院議員。処刑人、ゴースト。完了」

「二〇一九年七月八日、標的――サラ・シンクレア検事。処刑人、ゴースト。完了」

 三十七人の名前。三十七件の殺し。

 中には当然の報いを受けた者もいた。人身売買業者。殺人者。社会の屑。だが、一部はただルシアンの邪魔になっただけだった。間違った人物、間違ったタイミング。

 私の手が震え始めた。

「君、ただの情報屋じゃないな?」

 私は銃を抜きながら、素早く振り返る。

 ケイルがはしごの最上段に立っていた。上からの薄明かりに照らされ、その姿はシルエットになっている。

「つけてきたの?」

「部下の一人が君が出ていったのに気づいてな」彼ははしごを降り始める。「どこへ向かうのか見てみようと思っただけだ。で、これは何だ? ルシアンのファイルを盗んでいるのか? それとも、自分の足跡を消しているのか?」

 私は銃を降ろさない。

「誰にだって秘密はあるわ、ヴォーン。私の秘密は、たまたま役に立つってだけ」

 彼は銃など存在しないかのように、私に向かって歩き続ける。六十センチの距離で立ち止まった。換気口から差し込む月光が彼の顔を横切り、あの傷跡を際立たせる。

「秘密は持っていていい」と彼は言った。「だが、肝心なときに嘘をつくな」

 私たちは暗闇の中で立ち、互いを見つめ合っていた。何か――理解のような、あるいは警告のようなもの――が二人の間を行き交う。

「心配しないで」私はついに銃を降ろしながら言った。「一度約束したら、必ず守る」

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