第6章

ノラ視点

 叩きつけるような雨が降っている。

 深夜のニューヨーク。港湾地区一帯が、水と霧で滲んだようにぼやけている。もう十回も顔を拭っているが、意味がない。全身ずぶ濡れだ。

「奴はあそこ」私は遠くのコンテナ列を指差す。「第三倉庫の裏よ」

 無線からケイルのノイズ混じりの声が聞こえる。「包囲網を狭めろ。逃がすな」

 私たちはルシアンを六時間も追跡している。カジノから逃走した後、彼は家に帰らなかった。ただ街を彷徨い続けていただけ。でも、彼のことは知りすぎている。追い詰められると、いつもここに戻ってくるのだ。ここには救命艇が用意してある。

 雨が顔に叩きつけ、視界を遮る。私は両手に銃...

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