第170章

「さっきの、見ていたか?」と俺は尋ねた。

 大平愛子は淡々とした口調で答える。「ええ、見ていたわ。昨日戻った時から、猿人たちの様子がおかしいとは感じていたの。赤毛が集団の中で孤立させられていたようだし。あなたが来たら相談しようと思っていたんだけど……まさか、こうもあっさり解決してしまうなんてね」

 俺は服にこびりついた鮮血を見下ろし、苦笑交じりに呟く。「この服もったいないな。着替えてから数日しか経ってないのに」

 大平愛子は慰めるように言った。「山に入って鹿の群れを追えば、もっと汚れることになるわ。細かいことは気にする必要はない」

「赤毛が怪我をした。具合がどうなのか……」俺は心配そ...

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