第172章

ヒグマが逃げようとする凄まじい勢いこそが、その巨体にとって致命的な弱点となった。

 地面にしっかりと固定された石槍は、ヒグマ自身の慣性と地面からの反作用を借りて、その喉を深々と貫いたのだ。

 鮮血が激しく噴き出す。ヒグマは石槍が突き刺さったまま十歩ほど駆け抜けたが、やがてドサリと重い音を立てて地面に倒れ伏した。

 狩りが始まってから、十分とかからない決着だった。猿人たちが歓声を上げて沸き立つ。

 ヒグマを仕留めたことで、俺の胸の奥からは言葉にしがたい興奮が込み上げてきた。

 いつの間にか大平愛子が傍らに来ていた。その口元には、安堵と喜びの入り混じった薄い笑みがある。

 ヒグマの肉...

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