第29章

しかし、その美景に酔いしれていると、突然胸に圧迫感を覚えた。

酸素が尽きかけていることに気づき、俺は慌ててアワビを一つ掴むと、海面へと浮上した。

水面に顔を出すと、ちょうど本田安奈が砂浜に向かって泳いでいるのが見えた。一方、大平愛子はすでに砂浜で穴を掘り、彼女の収穫物を保管する準備をしている。

俺は本田安奈のすぐ後ろについて、アワビを手に砂浜へと向かった。

浅瀬で立ち上がり、大平愛子の方へ歩いていく。

彼女は穴掘りに夢中で、俺が近づいていることには全く気づいていない。

本田安奈は傍らで、片手に伊勢海老を持ち、もう片方の手で髪についた海水をそっと払いながら、満足げな笑みを浮かべてい...

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