第30章

俺が躊躇していると、不意に大平愛子が目を開け、気だるげに言った。

「焼いてもどうせただの貝殻よ。それより、一昨日燻製にした亀の肉を食べましょう」

三船亜由美はそれを聞くと、すぐさま反論した。

「だめよ! あの亀肉は、本当に食べるものがなくなった時のために取っておかないと!」

だが、大平愛子は意に介さず笑ってみせる。

「大丈夫よ。明日には魚が食べられるようにしてあげるから」

そう言って、彼女は編んでいる最中の縄と、少し離れた場所にある木の棒を指差した。

「あなたたちじゃ網戸も編めないでしょ。後で私が網戸を編み終えたら、魚が獲れるようになるわ」

三船亜由美は半信半疑で大...

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