第45章

俺は土鍋を手にヤギへと向かい、限られた資源をどう活用すべきか頭の中で算段を立てていた。

ふと前谷鈴音に視線をやると、彼女が持つ防水マッチが残りわずかになっているのが見え、思わず憂慮が胸をよぎる。

「おじいさん、マッチがもう少ないわ。どうすればいいのかしら?」

三船亜由美の問いかけが、俺の思考を中断させた。

俺は眉をひそめて考え込む。マッチがいかに貴重で、手に入りにくいものかは痛いほどわかっていた。

きりもみ式の火起こしは古くからの方法だが、効率が極めて悪い。よほどのことがない限り、試したくはなかった。

俺はあたりを見回し、この島で火打ち石のような自然の火種が見つかるよう、心の中で...

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