第72章

本田安奈は松明を地面に置き、周りの枯れ枝や落ち葉を集めて火を点けた。

俺は精巧な機械式クロスボウを片手に、身を屈めて消えかけの松明を引き抜き、力任せに投げつけた。

一瞬にして炎が燃え上がる。

野生の狼たちは驚いて一歩後ずさり、俺と本田安奈は素早く火の光の背後へ逃れ、その庇護を求めた。

太陽が沈み、夜の帳が山森全体を覆い始めると、炎が俺たちの防護壁となった。

俺と本田安奈は焚き火の後ろに隠れ、野生の狼たちは徐々に闇の中へと姿を潜め、ただ夜色の中にあの身の毛もよだつ緑色の瞳だけをきらめかせていた。

俺は大きく息を切らし、額からは糸の切れた数珠のように汗が滑り落ち、頬を伝って顎に滴り、...

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