チャプター 207

マティ

もう一度、予算シートに集中しようとした。だが、あの箱のことが頭から離れない。どうにか忘れられたと思っても、そのたびに視線はテーブルの真ん中に置かれた箱へとさまよってしまう。この希少な材料が一体何なのか、知りたいという誘惑に抗えなかった。

『もうどうにでもなれ』。悪と災いはすでに世に放たれてしまったのだ。今さら私がこれ以上、事態を悪化させることなんてできないだろう?

私は箱を手前に引き寄せた。深呼吸を一つして、蓋を開ける。材料を固定しているベルベットのような生地を指でなぞる。箱から小さな瓶を取り出し、蓋をひねって開けた。鼻を突く、ひどい臭いが立ち上った。湿った土と、何か古く...

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