第3章
夏奈視点
二ヶ月後。
M市中心街にあるM市私立病院、特別産科病棟。午前三時。あたりは静寂に包まれていた。
私は豪華な病室のベッドに横たわり、激しい陣痛の後の疲労困憊で眠っているふりをしていた。隣のベッドの美花も、つい先ほど同じ苦しみを味わったばかりで、呼吸は荒く速く、明らかにまだ回復しきっていない。
二つの小さな命が、透明な新生児用ベッドの中で静かに横たわっている。柔らかな常夜灯の光が、その繊細な寝顔を照らし出していた。私の娘と美花の娘は、とてもよく似ていて、あまりにも無垢だった。
「お二人とも出産予定日が近かったなんて、すごい偶然ですね!」と、その日の午後、看護師長は感心したように言っていた。
奇跡? これはすべて、子供の身分を入れ替えるために、あの人たちが仕組んだことだ。
さあ、いよいよ本当のショーの始まりだ。
私は薄目を開けて美花を観察した。彼女は産後の衰弱した体に鞭打ち、慎重にベッドから起き上がると、二つの新生児用ベッドをじっと見つめている。
始まった。
彼女が、あの忌まわしい赤ちゃんの取り違え計画を実行しようとしている。
美花は裸足のまま、新生児用ベッドへと忍び寄る。その一歩一歩は困難そうだったが、瞳に宿る強欲と計算高さに突き動かされていた。
前回、彼女が私たちの子供を入れ替えたのはこの時だった。そうして、私が何も知らずに彼女の娘を自分の子として愛する一方で、私の本当の娘は劣悪な扱いを受けることになった。こうすれば、彼女の娘が真の後継者として享受すべきすべてを手にできるからだ。
彼女はまず、二人の子供の手首にある識別バンドを確かめると、私の娘の手首からそっとタグを外し始めた。
「ごめんね、赤ちゃん」彼女は私の娘に囁いた。「でも、私の子にはもっといい人生が必要なの」
毛布の下で、私は固く拳を握りしめた。
美花は慎重に両方の識別バンドを外し、位置を入れ替えた。
「よし……」彼女は満足げに呟き、自らの『傑作』をうっとりと眺めた。
そして、ふらつきながらベッドに戻ると、すぐに疲労困憊の眠りに落ちていった。
私は三十分間、じっと待った。彼女が完全に眠りについたことを確かめてから、静かに身を起こした。
今度は、私の番だ。
産後の痛みに耐えながら、私は一歩、また一歩と新生児用ベッドに近づいた。二つの無垢な小さな命を見つめていると、複雑な感情が胸に込み上げてきた。
「ごめんね、二人とも」私は囁いた。「でも今度は、ママは本当に守るべき子を守るからね」
私は識別バンドを元に戻し、それぞれの子供を本来あるべき場所へと帰した。
夜が明ける頃、看護師が回診のためにドアを開けて入ってきた。
「おはようございます、黒石さん!」看護師は快活に言った。「赤ちゃんたち、とても安らかに眠っていますね」
私は今しがた目を覚ましたふりをして言った。「看護師さん、二人とも大丈夫ですか?」
「ええ、とてもお元気ですよ!二人とも完璧な小さな天使です」看護師は識別バンドの情報を確認した。「お二人の美しいお嬢様ですね」
美花の目に勝利の光が宿った。彼女は自分の計画が完璧だと思い込んでいるのだ。
愚かな女。
「夏奈さん、この秘密を守ってくれてありがとう」美花は意味深に言った。「あなたならきっと、完璧な母親になれるわ」
「心配しないで、美花」私の笑みは一層輝きを増した。「この二人の子供は、私がしっかり面倒を見るわ」
そう、私は完璧な母親になるだろう。ただし、私の血を分けた娘にとってだけの話だが。
「黒石さん、本日退院できますよ」と看護師が言った。「小さなお姫様たちも、一緒にお家に帰れます」
「ありがとうございます。お世話になりました」私は穏やかに答えた。
ほどなくして、大輔が大きな赤い薔薇の花束と、二つの精巧な抱っこひもを手に病院にやってきた。
「俺の娘たちはどうだい?」彼は私の額に情熱的にキスをすると、新生児用ベッドへと歩み寄った。「ああ、なんてことだ、なんて美しいんだ!こっちが俺たちの娘だよな?」彼は私の本当の娘を指差した。
「ええ、こちらがお姉ちゃんよ」私は微笑みながら言った。心の中に、本物の母性愛が込み上げてくる。
美花は傍らで力なく微笑み、計画が『成功』したという喜びに完全に浸っていた。
だが、すべてが既にあるべき軌道に戻っていることを、彼女は知る由もなかった。
「家に帰ろう」と大輔が言った。「うちの小さなお姫様たちのために、最高に豪華な子供部屋を用意したんだ」
「最高ね」私は自分の本当の娘を抱き上げた。血の繋がりの温かさを感じながら。
美花もまた、自分の娘――彼女が私の実子だと思い込んでいる赤ちゃんを抱き上げた。
私たちは家に帰る準備ができた。今回、運命の軌道は完全に変わったのだ。
彼女の娘はこれから劇的に異なる人生を経験し、そして私の娘は、彼女が享受すべきすべてを受け取ることになるだろう。
