第64章 粗野で醜い女

佐藤愛に尋ねられ、高山健はすぐに紹介を始めた。

「愛姉さん、この絵は本物なんですよ。現代の画家が描いたもので、父がその人と少しばかり付き合いがあって、彼の絵を何枚か、うちの展示会のために数日間貸してもらってるんです」

「で、その後は傷一つなくお返ししないといけないんですよ」

その絵は、広大な草原の光景を描いたものだった。見渡す限りの翠緑の草原。その中を、栗毛の馬に乗った一人の少女が駆け抜けている。

夕陽が沈み、草原は残光に満ちている。その野性的な美しさは、見る者の心を伸びやかに解き放つような感覚にさせた。

佐藤愛は幼い頃を北陸で過ごしたため、このような環境には馴染みがあった。...

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